月姫・志貴君ちのお茶会


ゆ〜きさん 作

その日は雲一つない、良く晴れた日だった。
休日だということもあって、お茶会に集まったメンバーは全員が揃っていた。

たまたま皆の予定が空いてたその日、志貴の提案で、たまにはみんなでお茶でも飲もう、ということになったのだ。
場所は遠野家の敷地内。
翡翠と琥珀さんが給仕をする中で、そこには緩やかな時間が流れるはずだった。
少なくともその場にいた一人を除いては、緩やかな時間を感じていた。


ふふふ、と怪しい微笑を浮かべながらグラスを傾けている秋葉。
ワイングラスに入っているのは、なんだか妙に粘度の高い赤い色をした液体だ。
それをゆっくりと、手のひらで温めるようにしながら飲んでいる。
ペチャリ、と音を立てながら唇をなめる様子が、妙に生々しい。

やっぱりお茶は日本茶に限りますねー、なんて言いながら持参した湯飲みをすすっているシエル先輩。
れっきとしたお茶会の会場で中国茶の逸品を煎れて、なおかつこれも持参したらしいうまい棒(カレー味)を、ぽりっとかやっている。
何時の間に用意したのか、正座している先輩の足下にはござが敷いてあったりする。

紅茶にミルクを入れながら、優雅にカップを口に運ぶアルクェイド。
気品に溢れるその姿は、流石は真祖の姫君といったところだ。
ちなみに紅茶とミルクの割合は1:9。
ひえびえとしたミルク(紅茶風味)を片手に、紅茶の香りを楽しんでいる。
微かにしかしないであろう紅茶の香りをかぎ分けられるあたりも、流石は真祖の姫君といったところだ。

子猫モードになってお皿に注がれたミルクを嘗めているレン。
お皿がテーブルの上に置いてあるので、気まぐれに茶菓子を持っていたりしている。クロテッドクリームの付いたチーズケーキが妙に減っているよ
うに見えるのはきっと気のせいなのだろう。

隅っこの方でコーヒーを飲んでいるのは晶ちゃん。
何故かブランデーをしかも大量に注ぎ込んだそれは、翡翠なら近寄っただけで酔ってしまいそうな香りを放っている。だが、アルコール度数50%
(推定)のそれを飲んでいるにもかかわらず、当人は至って平然とした様子を崩さない。

そんな中で翡翠と琥珀さんは、あちらこちらと立ち回りながら給仕の仕事をこなしている。そこそこ忙しいはずなのに、全くそんな様子を感じさせ
ないのは流石だろう。
秋葉に、シエル先輩に、アルクェイドに、レンに、晶ちゃんにそれぞれの要望に答えるべく、給仕一式の乗せられているワゴンにはいろいろな物品
が準備されている。
具体的に言うと、ティーセット一式をはじめとする茶菓子やケーキ。
輸血パックに京菓子、、一升瓶に中国茶、刺激臭のする鍋に怪しいオーラを放つ一番下の引き出し、その他etc.・・・。


間違ってる、何かが絶対に間違ってるって・・・。


そんな麗らかな午後の昼下がり。
汗ジト流しながら、人外魔境なお茶会を楽しむ志貴君であった、まる。

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