匿名希望さん 作
夜の闇が愛しあう二人を優しくつつみ込む頃。
「桃子…」
「士郎さん…」
甘い言葉はもはや必要なくて。
ただ、そこにあるのは。
愛と!
本能のみ!!
愛する二人がひしと抱き合う、まさにその瞬間。
ばたんと音を立ててドアが開く。
「とーさん、明日の鍛錬のこと…あ」
御神の剣士たる者、場の空気を読むことにかけては他に追従を許さない。
そして、恭也もまた子どもながらその剣士のひとりであるからして。
一瞬で状況を判断し、すばやくドアが閉じられる。
「ごゆっくり」
さりげなく残した言葉は、的確にして辛らつ。
…ほんとに子ども?
ま、それはともかく。
後に残った気まず〜い空気。
しかし、御神の剣士は諦めないのだ。
そう、決して!!
「は、ははは。き、気を取り直して。ごほん。も、桃子っ!」
桃子をがばりと抱きしめる士郎。
「あんっ、士郎さんっ」
甘い声をあげた桃子が、そこかしこを優しくかつ怪しく動き回る士郎の手によって、そっちの方へ流されかけたまさにその瞬間。
「うええ〜ん、おとーさん、おかーさ〜ん、夢にお化けが出てくるんだよぉっ!…なにしてるの?」
怖い夢を見た美由希がドアをぶち破らんばかりの勢いで飛び込んできた。
べそをかいていたのにもかかわらず、なにやらやたらとくっついて母をなでなでしてる父の姿に気がついて、不思議そうに2人を見つめる。
「い、いや、これはだなぁ」
「あ、あはは。あ、あのね、美由希。その、お母さんも怖い夢見たからお父さんになでなでしてもらってたのよぉ」
「そ、そうそう。も〜大丈夫だぞ〜、怖くないぞ〜、なでなで」
「おかーさんばかりずるいっ。美由希も!」
そう言って、二人の間にもぐりこむ美由希。
「えへへ、おとーさん、おかーさ…ん…」
すぐに寝息をたてて眠ってしまう美由希をよそに。
「まあ、これはこれで。ねっ」
妻の顔から母の顔に戻り美由希の頭をそっとなでて微笑む桃子。
「ぼ、墓穴を掘った…」
が〜んな表情の士郎は。
「くうう、これで連続1週間もおあずけだぁぁ!!」
ちょっぴり血の涙を流してたりするのだった。
ま、これも良くある風景のひとつで。
高町家の夜は今日も平和にすぎていきましたとさ。
<後書き…?>
きっかけはメールでKOH様に「いちゃつく士郎とーさんと桃子かーさんのSSを!」というおよそ私に書けるとは思えないリクでございまして。
ない知恵と限りなく0に近い経験値を絞り尽くした結果、このようなコメディミニSSもどきができました。
ちなみに…実体験ではありませんよ、ええ、決してっ(爆)
まあ、高町さんちにもこんな日がきっとあった・・・かもしれないと言う事で(笑)
ちょっとでも笑っていただければ幸いです。
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