うたたね


匿名希望さん 作

 空がゆっくりと色を変えてゆく。
 蒼から紅へと。
 昼間の熱気はゆるゆると去っていき、風鈴を鳴らす風が、同時に縁側に涼しさを運んでくれる。
 仕事に出ている者、遊びに行っている者、買物に出ている者、友人宅で夏の課題に追われている者。
 それぞれ忙しげに去りゆく夏を追いかける家人たち。
 一緒に行こうと誘ってくれる声もあったのだけれど、何故か今日はひとりで居たいような気がして。
 だから、今は留守番を引き受けたフィアッセただ一人。
 いつもにぎやかな高町家だけに、しんとした静けさがいっそう感じられる。
 傍らにおいてあったアイスティーのグラスの氷が、カランと音をたてた。
 夏の終わりの夕暮れは、少し苦手。
 昼間の暑い空気の中で聞くそれと違い、赤くなっていく空に響く蝉の鳴声が、無償に胸の奥をざわめかせるから。

 帰りたい
 帰りたくない

 そんなことを考える自分に、少し苦笑するフィアッセ。

 ここ以外どこに帰るというのだろう
 ここが私の居場所なのに

 蝉の鳴き声を聞きながら、フィアッセはいつしかゆっくりと意識を手放していく。
 過去という夢の中へ。


「高町恭也です」
 にこりともせずにそう名乗った少年は、髪も瞳もおまけに身に付けている服も真っ黒。
 少し年下のはずの少年は、けれどそうは思えないほど落ち着いていて。
 あまりにそっけない挨拶とあいまって、実を言えば少し怖かったことを覚えている。
 母のティオレが校長を務めるクリステラ・ソングスクールにも、黒髪、黒い瞳の人はいたけれど、ほとんどが年上の女性だったせいもあって、何かと話し掛けてくれるし、いつも優しい笑顔を向けてくれる。
 加えて幼い頃から体が弱くて病気がちだったこともあり、家族ぐるみの付き合いであるアイリーン以外には同じ年代の友人がほとんどいなくて。
 ましてや、男の子の友達なんているはずもなく。
 父のアルバートのボディガード兼友人である士郎から、恭也のいろいろな話を聞いていて会うのを楽しみにしていたのだけれど、いざ目の前に立たれると、むっつりと黙りこりまっすぐ自分を見つめている少年の瞳にちょっと気後れしてしまう。
「あ、あの…フィアッセ・クリステラです…」
 そうなんとか名前を告げるので精一杯だった。
 そのまま、顔を伏せてしまい、時折ちらちらと視線だけで恭也の顔を見る。
 その恭也は、さっきからちっとも表情を変えず、歳のわりに愛想がないと言われ続けている顔でじっと見つめてくる。
 そんなある種の緊張した空気をあっさり打ち破った人がいた。
「な〜に気取ってんだか」
 言葉とともに、微塵の躊躇いもなく恭也の後頭部に拳骨を打ち下ろした士郎その人だった。
「痛い。いきなり何をするんだ、とーさん」
 あまり痛いような顔をしていないが、それでも理不尽極まりない父の態度に抗議する恭也。
 しかし、それすらもあっさり聞き流し、士郎は熱弁をふるう。
「いいか、恭也。いくらフィアッセがかわいいからって、黙ったままじっと見つめているのは、はっきり言って男としてあまりにふがいないぞ。こ〜、何だ。会えて嬉しいですっとか、好きですっとか、大人になったら結婚して下さいっ、とか言えんのか!」
 後半は絶対に違う、と言いたげに言葉を返す恭也。
「相変わらずとーさんの考えることはよく分からないけど、別に気取ってるつもりはないし、じっと見つめてたつもりもない」
「可愛げのない返事だなぁ、恭也。全く、その無愛想ぶりは誰に似たんだか」
「少なくともとーさんじゃないことは確かだと思う」
「あ、あの」
 いきなり眼前で繰り広げられた親子ゲンカにちょっと唖然とする。
 同じく少しの間ぼうっと二人のやり取りを見ていた美由希が。
「おとーさんもお兄ちゃんもずるい!!みゆきもなかまに入れてよぉ!!」
 もめている士郎と恭也の様子が楽しそうに見えたらしく、すっかり仲間はずれにされたとおかんむり。
「あ、いや、美由希、これは別に遊んでいるわけじゃないぞ」
 慌ててとりなす士郎。
 その様子が、警護の時に見せていた厳しい表情でも、オフの時に見せてくれる優しい表情でもなくて。
 少しあっけにとられて二人を眺めていた目には、何だか初めての子育てに右往左往する新米パパのそれのように映って思わず吹き出しそうになり、慌てて笑いをこらえる。
「ごほん、ではあらためて。俺の手を握っている素晴らしく可愛い女の子が、目に入れても痛くない程大切な娘の美由希で、俺の隣にいる美しい女性が、目どころか口の中に入れても痛くない、と言うか思わず食べてしまいたくなるほど素晴らしい奥さんの桃子だ。で、こっちの無愛想なのが、不承の息子恭也」
「えっと、たかまち、みゆき、です」
「高町桃子よ、よろしくね」
 少し緊張気味に、ぴょこんと頭を下げる美由希と、見る者が思わず笑顔を返したくなるような素敵な笑顔で声をかけてくれる桃子。
「よろしくお願いします」
 はにかみながらも笑顔で挨拶を返すことができた。
 そんな和やかな雰囲気をよそに。
「紹介の仕方に差を感じる」
「気のせいだ」
 やけにきっぱり言う士郎。
 そこはかとなく緊迫した空気が、残りの二人の間に漂っていた。
「ふふふ」
 先ほどは我慢していた笑い声が、我知らずこぼれだす。
 静かににらみ合っていた士郎と恭也が驚いてふり返る。
「フィアッセ?」
「ご、ごめんなさい、ふふふ。あ、あんまりおかしくて…」
 少しの間、びっくりしたように見ていた士郎達だが。
「あはは」
 美由希が笑い出し。
「あはははっ」
 桃子も笑い出して。
「は、ははは…」
 後はもう、苦笑いするしかないと言った風情の士郎と。
「何がおかしかったんだ?」
 未だ憮然としたような、戸惑ったような表情の恭也をよそに、すっかり打ち解けることができた。
 その後、結局恭也のあの無愛想な口ぶりは多分に照れまじりだと気がついてからは、気軽に話し掛けたりできるようになり。
 高町家で過ごした日々は、それから何年たっても思い出す度にきらきらと光り輝く宝石のような宝物になった。

 例えば、満開の桜の下でのお花見。

「とーさん。いくら好きだからって、シュークリームをつまみながらお酒を飲むのはやめた方がいい」
「いいだろ、別に。俺は甘い物もお酒も両方好きなんだ」
「他の花見をしている人たちが気持ち悪そうに見ている」
「何だ、恭也。人の嗜好に文句をつけるのか?」
「士郎さん、私もやめて欲しいんだけど」
「も、桃子まで!」
 何だかしょげ返ってる士郎をよそに、美味しそうに、しかし忙しげにお弁当を食べる美由希。
 不思議に思って。
「美由希、慌てなくてもご馳走は逃げていかないよ」
 とたずねると。
「逃げてくもん。だって、この前の時、おとーさんとお兄ちゃんがごはん、ひっくり返しちゃったんだよ」
 と、わかったようなわからないような答えが返ってきた。
 苦笑しながら桃子が付け加える。
「前にお花見をした時にね、酔っ払った士郎さんが『こ〜んなに酔っててもおまえなんぞにやられんぞ〜』って恭也を挑発しちゃってね。『それなら、それが本当かどうか確かめる』なんて、恭也も挑発にのっちゃってね〜、料理はひっくり返すは、せっかく綺麗に咲いてる桜の花は散らすはで大騒ぎになっちゃって」
「で、結局、桃子に二人とも叱られてさ。『反省しなさい』って、家に入れてもらえなかったんだよなぁ」
「とーさんのせいで、公園で野宿する羽目になった」
「そうそうって、俺のせいにするつもりか」
「間違いなく、とーさんのせいだ」
 目に見えない火花が散って。
「二人とも…今夜はここに泊まっていくつもりなのかしら?」
 あっさり消えた。
 桃子は笑顔なのに、どうしてこんなに冷汗が流れるんだろう。
 まだまだ自分の知らない事が世の中にはたくさんあるのだと、思い知った瞬間だった。
 
 例えば、照りつける太陽の下での海水浴。

「おまたせ〜!」
 言葉とともに、更衣室から出ていく桃子。
「うんうん、さすが桃子!抜群のプロポーションだなぁ。思わず惚れ直したよ」
 割と大胆な黒のビキニの水着を着ている桃子を、士郎はおもっきり目じりを下げながら褒めちぎる。
「やだ〜、も〜、士郎さんったらっ!!!お世辞なんていっても何にもでないわよぉ」
 照れながらも、桃子もまんざらでもないようだった。
「それに〜、士郎さんだって素敵よぉ」
「いや〜、はっはっはっ。愛する桃子にそう言われると、照れるじゃないか」
 際限なく誉めあっている両親を少し飽きれて見ていた恭也に向かって、小さな声で呼びかける。
「あの…恭也。どう、かな?」
 正直、少し恥ずかしい。
 けれど、昨日デパートで2時間もかけて桃子と選んだ末、やっと決めた水着なのだから見て欲しい気もする。
 だから、イエローのワンピースという水着姿で、思いきって恭也の前に立ってみた。
「あ…その…」
 口篭もる恭也から期待していた言葉はなかった。
 でも…まっすぐな視線が恥ずかしい。
 自分の頬が熱をおびていくのがわかったから、思わず俯いてしまう。
 それに気づいたのか恭也の頬も赤くなっていく。
「どうしたの〜?」
 俯いたままの二人を、不思議そうに眺める美由希。
 その無邪気な声が遠く聞こえる。
 結局、その後士郎と桃子に、散々からかわれてしまったけれど、不思議と嫌な気はしなかった。

 例えば、穏やかな日差しの下でのピクニック。

「空気もいいし、こういうところで食べる食事は美味しいわよ」
「そうだね、桃子」
 河原にかまどを作り、採りたてのキノコの調理をはじめる桃子を手伝う。
 赤や黄色に色付いた木々の葉を、一生懸命拾い集めている美由希をちらりと見て。
「さて、それじゃあ釣りをはじめるか」
「ああ」
 士郎と恭也は、食事のメインとなるべき川魚を釣り始める。
 暫く黙って釣り糸をたれていたかと思うと。
「かかった!!」
 素早く一匹釣り上げる士郎。
「ふふん。どうだ〜、恭也。これだけ見事なサイズは、おまえには無理だろう」
「そんなこと、ないっ」
 そう言うと、先ほど士郎が釣り上げた魚より、明らかに大きいものを釣り上げてみせる恭也。
「な、生意気な。よ〜し、恭也、勝負だ」
「すぐムキになるのは良くないクセだと思う」
「うるさいぞ!勝負するのか、しないのか、どっちだ!」
「わかった、勝負する」
 昼食のおかずを確保するという本来の目的を忘れ果て、ものすごい勢いで川上に向かって駆けていく士郎と恭也を唖然として見送ってしまう。
「あ、あの、止めなくていいの桃子?」
 少し心配になってそう桃子に言うと。
「ああなったら止められないわよ二人とも。ここなら他の人の迷惑にならないし、好きなだけ勝負してても大丈夫。それより、もうそろそろ料理ができるから、先に食べてましょ」
 笑顔でそんな答えが返ってきたから、こういった事は高町家ではごく普通の出来事なのだと窺い知れた。
「わ〜、いいにおい〜」
 実際、そのあたりの事はよくわかっているのか美由希も全く意に介していない。
「はい、これで手を拭いてから食べましょうね」
 お絞りを美由希の手に渡し、できたてのキノコ汁と飯盒で炊いたご飯を器によそう桃子。
 それから、念のためにと持ってきたチキンの香草焼を火の中からそっと取り出し、ホイルをはずしてお皿に移し変える。二人の分は、食べる時温めなおす必要があるからホイルをかけたまま火から離しておく。
 薬缶を火から下ろして、お茶を入れて。
 クーラーボックスに入れたサラダを一皿だけ出して、後の一皿は二人のために取っておく。
「デザートは、後でいいわね」
 あっという間に桃子は食事の用意を終えた。
「ね、桃子、いいの?」
「大丈夫よ〜、あの二人だもの。おなかすいたってすぐ帰ってくるわよ」
 いいのかなぁと思いつつ、美味しい食事を堪能する。
 二人が戻ってきたのは、結局、デザートを食べている頃だった。
 ちなみに。
 勝負の行方は、
「数の多さで俺の勝ちだ」
「それ、どう見てもリリースするべきサイズも混じってる」
 と、どちらも自分が勝ったと譲らず引き分けとなった。

 例えば、降り積もる雪の下でのかまくら作り。

 一面降り積もる雪を見ようと士郎が言い出して、北の街へ出かけた。
「なあ、恭也。日本の雪国のわびさびを、フィアッセに教えてあげたいと思わんか」
「唐突に何を」
「思うだろ、そうだろ、うんうん。と、言う訳でかまくらを作るぞ、恭也!」
 鄙びた風情のある旅館へ着くなりそう宣言した士郎。
 どこからつっこんでよいものかと皆が戸惑っているうちに、士郎は手回し良く道具を借りてくる。
「よく貸してくれたわね〜」
 苦笑しながらそう桃子が言うと。
「古い知り合いがやってるんだよ、ここ。だから、ちょっとぐらいの無理はきくのさ。さて、準備はできたぞ。恭也も降りてきて手伝え」
 風邪をひくといけないからと手伝いをやんわり断られ、暖かい室内から美由希と見守る。
 桃子は、何かを温かいものを用意すると言い残して、部屋を出て行った。
 暫くすると案の定士郎がむきになり、そこはかとなく恭也も張り合った結果。
 出来上がったかまくらは全員が余裕で入れるような代物になったのだった。
 寒いはずの雪景色。
 初めて入るかまくらの中は意外に暖かかった。
「ご苦労さま、恭也」
 シャベルを持ったまま座り込んでいる恭也のそばにしゃがみ込んで、微笑みながら手に持ったタオルでそっと額の汗をぬぐってあげる。
 少しくすぐったそうな表情をして、その後。
「ありがとう」
 かすかに微笑んでお礼を言ってくれる恭也。
 あたたかな何かが心を満たしていくのを感じた。
「ご苦労様、あなた。さあ、皆でおやつにしましょうか」
 旅館の人にお願いして、キッチンを借りた桃子が用意していたのは、桃子特製焼き立て熱々アップル・パイ。
 待ちくたびれて眠ってしまっている美由希をそっと起こして、かまくらの中でのティータイム。
 ミルクティーとは別に、美由希は甘〜いココアで、恭也は緑茶。
 そして甘党の士郎には、ミルクティーとアップルパイに加え、甘〜い甘酒にお汁粉。
 見ているだけで胸焼けをおこしている恭也をよそに。
「うまい、うまいよ、桃子!それに、さすが良く気がつくなぁ。やっぱりかまくらの中で食べるものといえば、甘酒とお汁粉だよな〜」
 幸せそうな顔で、全部平らげる士郎。
 かまくらを一番楽しんでいるのは、士郎かもしれないと思った。

 どの季節も楽しかったが、とりわけ楽しかったのが夏。
 何もかも初めてのことばかりだった。
 花火、浴衣、カキ氷、西瓜割り、セミとりに魚釣り。
 同時にとりわけ辛かったのが夏の終わり。
 長い休みが終わり、もうすぐ帰らなくてはならないとわかっていると、蝉の声さえ辛く思えた。

 父と母の待つ英国へ帰りたい
 もっともっと恭也や美由希と遊んでいたい

 二つの相反する想いに幼い胸を痛めていた。
 今思えば、多分それさえも幸福な悩みというものだったのだろう。

 そんな幸福な子供時代は、思いもかけない形で無理やり断ち切られる。

 轟音と悲鳴。
 辺りが急に暗闇に閉ざされたかと思うと、そこかしこで火の手が上がった。
 呆然と立ち尽くすその視界に、傷だらけの彼がいた。
 最後に見たその人の表情は、笑顔。
 苦しいはずなのに、ただ相手のことを気遣い、無事を喜んでいる笑顔。
 やがて炎に包まれて、視界は闇に閉ざされる。
 意識を取り戻したときには、全てが終わっていた。

 士郎の……死。 

 私のせいだ
 私の背中にこんな呪われた翼があるから
 だから…だからっ
 ごめんっ…ね…ごめんね…

 強い悔恨と自責の念。

 もう決して誰かに近づきすぎてはいけない
 大切な人を巻き込んではいけない
 哀しいことに巻き込んではいけない

 でも神様
 ひとりは…さみしいです

 きっかけは一人の年上の女性との出会い。
 懐かしいもう一つのふるさとから来たその人は、勇気をくれた。
 歌を歌う勇気を。
 少しずつ月日が楽しかった日々を、辛かった日々を思い出に変える。
 時は平等だった。
 喜びにも…悲しみにさえ。
 
 コンサートのリハーサル中に起こった事故、というよりそれを防ごうと使った力の代償に喉を痛め、再び日本を訪れた。
 懐かしい人たちの住む…海鳴へ。

 時折やり取りしていた手紙で、桃子が経営する洋菓子店「翠屋」の繁盛振りを知っていたから、忙しいだろうと断った迎え。
「やっぱり来てもらえば良かったかな…?」
 数年ぶりになる日本は、少しどころかずいぶんその街並みを変えていた。
 全く見知らぬ国に放り出されたようで少し心細くなる。
「日本語は読めるし、喋れるんだから、うん、大丈夫」
 ルームメイトとなるアイリーンから預かった鍵をぐっと握り締め、トランクを持ち直し歩き出そうとした時。
「すまない、少し遅れた」
 記憶にあるよりずっと高い位置から。
 記憶にあるよりずっと低い声で。
 声が聞こえた。
 けれど変わらぬ瞳で。
 変わらない、笑顔で。
「おかえり、フィアッセ」
 優しい、声が聞こえた。
「ただいま…恭也…」
 涙が出そうになった。
 何とか声が出せた。
 幼かった想いが形を変えていくのをはっきりと自覚した。

「ねえ、桃子。翠屋のお手伝いさせてもらえないかな?」
「え?そりゃあ、願ったりかなったりだけど〜、いいの?」
「うん。別に喉を痛めたって言ったって全く声を出せないわけじゃないし。桃子、忙しそうだから少しでもお手伝いできたらなって」
「ありがと〜、助かるわ〜」
 翠屋でウエイトレスをはじめて。
 何時の間にかチーフなんて呼ばれるまでになって。
 忙しくて。でも楽しくて優しい日々。
 いつか終わる永い永い休暇に似ていたそれは。
 たった一人のためのコンサートという形で締めくくられる。
 やっと、やっと…届いた想い。 


「こんなところでいつまでもうたたねをしていると、風邪をひくぞ」
 そっと髪をなでる優しい手と声が、フィアッセを夢から揺り起こす。
 いつのまにかかけられたタオルケット。
 夢の続きを見るように、フィアッセはゆっくりと微笑む。

「おかえり、恭也」
「ただいま、フィアッセ」

 微笑む貴方が教えてくれる
 ここが 私の Lovely Place 




<後書き…?>

 最初にお詫びをしておきます。
 恭也とフィアッセが最初に出会うシーン、あえて本編とは違うシーンにしてあります。

 原作無視してごめんなさい!!

 いや、ゲームを再プレイしている時間がなく…ごほんごほん。
 じゃなくて(まあ、それもない訳でもないわけじゃなく…ごにょごにょ)乏しい記憶をかき集め、あまつさえ他の方々にお知恵を拝借してまではっきりさせた出会いのシーン、何とか私のSSに組み込もうとしたのですが…無理でした(爆)
 私のイメージの中では、幼い頃の恭也はどこまでも不器用で無愛想で照れやな愛すべき少年であり、おなじく幼い頃のフィアッセはどこまでも引っ込み思案で大人しくて繊細な愛すべき少女であるのでして。
 それを突き詰めてSSに入れ込んだら、こんなシーンになりました。
 う〜ん、我ながら何たる開き直り。

 えっと。
 後、セルフ突っ込み。
 留守番なのに、うたたねしてちゃダメじゃんフィアッセ(笑)
 え〜ま〜、そこはそれ。
「天才忍ちゃんの、『寝てても安心・泥棒なんて殲滅よ3号』にお・ま・か・せ!」
 とか何とか(爆)

 あと、この作品のイメージソングですが。
 『うたたね』(槇原敬之・アルバム『Such a Lovely Place』より)
 …まんまですね(笑)
 
 こんなSSですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
 
 
 
 
 
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