Kanon 俺の夏物語
           その七

「わあ、立派なお部屋ですね」
「ぴかぴか・・・」
部屋に入るなり呆気にとられる俺達・・・・。
いや、佐祐理さんは大して動じてないか。
「ふう、やっと一息つけるな」
ため息をつきながらベッドに腰を降ろす。
それにならうように舞も隣に座る。
「疲れた・・・」
「そうだな・・・舞はこういう所は初めてか?」
こくりと頷く。
「そうか、俺もこんなすごい所は初めてだ」
まったく町内会長さまさまである。
「舞〜こっちこっち!」
いつの間にやら移動していた佐祐理さんがバスルームらしき部屋から手だけ出してぴょこぴょこと手招きをしている。
「どうしたの・・・?」
「行ってみるか」
二人でその部屋をのぞいてみる。
「ほら舞、立派なお風呂だよ〜。一緒に入ろうね」
「うん」
実に微笑ましい会話だ・・・・。
だが、『一緒に入ろうね』。
俺の頭の中ではこの言葉だけが反芻していた。
「祐一・・・」
「ん?なんだ舞」
にこにこと答える俺
「やらしいこと考えてる・・・」
ギク!
「そ、そんなことなかですたい」
「あやしい・・・・」
「祐一さん熊本弁になってますよ」
「や、やだなあ二人共、俺がそんな事考える人間に見える?」
『かなり』
・・・・・・・。
さいですか・・・・。
「はあ、信用度ゼロ・・・・か」
これじゃ、北川とあんまり変わらないな。
がっくりと肩をおとす。
「ほら、祐一さん元気だしてください」
その肩をぽんぽんとたたいてくる。
「ああ・・・ありがとう」
「祐一・・・」
「何だ?舞も励ましてくれるのか?」
「お腹へった」
あ、そう・・・・。
「お腹へった」
「・・・・・」
「お腹へった」
「・・・・・」
「お腹・・・」
「だあぁぁ!分かった!!」
まったく・・・・。
「じゃあ持ってきたお弁当食べましょうか」
「そうだな、じゃあ俺はみんなを呼んでくるよ」
そう言って俺が立ち上がろうとすると。
「あ、祐一さんわざわざ呼びに行かなくても」
「へ?」
「電話がありますから」
言ってベッドの横にそなえ付けられている電話を指差す。
「あれって他の部屋にもかけれるのか?」
「はい」
そ、そうだったのか全然知らなかった。

「じゃあ、俺が電話をかけてる間に弁当の用意をしといてくれ」
「は〜い、ほら舞も手伝って」
「うん・・・」
てきぱき。ぱく。てきぱき。ぱく
「こらこら用意しながら食うな」
「おははへっへふほんへ」
「飲み込んでから喋れ!」
「ふぁい」
たく、さてと・・・。
「ぴぽぱっと」
まずはあゆ達の部屋にかける。
トゥルルル、トゥルルルガチャ。
「もしもし」
「おっ、その声はあゆだな」
「うぐ?誰ですか」
「俺だ!祐一だ!」
「あっ祐一君かぁ、何?」
なんでこいつは分からないんだろう。
「はあ、みんなで弁当くうから俺達の部屋に来い」
「本当?ボクお腹ぺこぺこだったんだ」
「そうか、なんたって食い逃げ泥棒だもんな」
「うぐぅ!ちゃんとお金払ったから泥棒じゃないもん」
「分かった分かった、早く来いよ」
「うん、じゃきるね」
「ああ」
がちゃ、ふう、次は名雪の所だな。
「再びぴぽぱっと」
トゥル、ガチャ!
はやっ!!
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「も、もしもし?」
怖る怖る話しかける。
「こちら本部だお〜」
こいつか・・・・・。
「本部至急応援を頼む」
「了解だお〜」
がちゃ・・・。ツーツー。
ピポパ。
再びかけなおす。
トゥルルル。ガチャ。
「もしもし?祐一さん?」
「あ、秋子さんですか?」
今度こそまともな相手がでた。
「はい、すいませんね。名雪ったら寝ぼけてて」
「いや、それはまあ別にいいんですけどこれからみんなでお弁当食べるんで俺達の部屋に来て下さい」
「分かりました」
がちゃ。
「あとは天野たちか」
ぴぽぱ。
「もしもし・・・・」
「お、天野か?これからみんなで弁当食うから俺達の部屋に来い」
「分かりました」
がちゃ。
・・・・最初にまともな相手がでるとこんな
に早く終わるんだなぁ。

数分後・・・・・。
ちょっと遅い昼食会が始まった。
「て、これは量ありすぎだろ」
「がんばれば食べれますよ」
にこにこと栞。
だってこの量は半端じゃないぞ。秋子さんの弁当はまだいいとして。
佐祐理さんと栞の弁当でタッグを組まれたら・・・・。
「侵入者だお〜」
まだ寝てる奴もいるし・・・・。
「名雪起きなさい!」
香織がゆさゆさと肩を掴んで揺らす。
「くー」
「私に任して下さい」
そう言って秋子さんは立ち上がるとそっと名雪の肩に手を置き・・・。
「喝っ!!」
びくんっ!と名雪がゆれたかと思うと・・・。
「はっ!ここはどこ???」
起きた・・・・。
「あ、秋子さん今のは・・・」
「単なる気孔術ですよ」
単なるってあんた。
「ま、まあいいや名雪も起きたことだし食おうぜ」
「わ〜い。ボクこのから揚げ〜」
「させるか!!」
あゆの箸がから揚げに届く前に奪い去る。
「うぐぅ!なにするんだよ」
「ふふふ、大勢で弁当を食べる時には弱肉強食の法が成立するのだ」
「そんな法ないよ!」
「ほらほら、祐一さんもあゆちゃんもそんなに慌てなくてもたくさんありますよ」
そんなこんなで数十分後・・・・。
「も、もう食えない」
「ボクも限界」
まだ半分以上残ってるのに・・・・・。
パクパク、パクパク。
「舞・・・・」
「はひ?」
口がぱんぱんでうまく喋れないらしい。
「いや、よくそんなに食えるなあと思って」
「おいひいかは」
「・・・・佐祐理さん、訳して」
「おいしいからって言ってるみたいですよ」
「そうすか」
いくらおいしくても限度ってものがあるだろう。
「・・・ごちそうさま」
結局舞が箸をおいたのはそれから十分後だった。
その間に俺達もちょびちょび食っていたので恐怖に弁当はほぼ全滅させることができた。
その後は各自部屋に戻り疲れを癒すために早めに床についた。
が、しかし!!
俺の夜はまだ終わってはいない!
そう、思い起こせばこの部屋に着いた時・・・・。
『舞、一緒にお風呂はいろうね』
今その言葉の通り、舞と佐祐理さんは風呂に入っている。
今こそ任務遂行の時!!
相沢軍曹いってまいります!
あさっての方向に敬礼をしてバスル−ムへのドアに近づく。
そろおりそろおり・・・・。
かさかさかさ!!ぴたっ!
ドアにひっつき聞き耳をたてる。
「祐一・・・ばれてる」
中から舞のそんな声が聞こえてきた。
なにい!?
舞は俺の見事に消した気配を察知したというのか!!
「ほえ?祐一さんなにか用ですか?」
「い、いえ!なんでもありません!」
慌ててベッドに戻る・・・・。
「くそ〜。舞があそこまでやるとは」
どうやら今夜の作戦は失敗に終わったようだ。
ぶつぶつと作戦をたてているうちに俺の意識は深い眠りのなかへとおちていった・・・・。

あとがき
え〜なんだか今回だけ妙に間があいてしまいましたね。
ただでさえ物語に進行速度が遅いというのに・・・。
まあ、ゆっくりいきましょう(爆)

さて、ずるずるとひきずってきたこの作品ですが次回いよいよディズニーランドに突入です!
・・・・・・・たぶん。




感想等は こちらまで お願いします。


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