Kanon 俺の夏物語
           その三(午前編)


「うわあああ!」
俺は朝一番で大声を張り上げていた。
な、なんだ夢か・・・・。
どんな夢かというと。
とにかく高い所に俺はいた。・・・としか覚えてない。でも怖かった。
くそ!真琴が昨日余計なこと言うから。
ふと見てみると汗をびっしょりかいている。
「シャワ―でも浴びてくるか」
俺はタオルをひっつかむと風呂場へ向かった。
現在金曜日の朝七時。
お、台所からいい匂いが、秋子さんもうメシの用意してんのか。
ていうか秋子さんは仕事があるんだよな・・・。ご苦労様。
「おはようございます」
「あら祐一さん、おはようございます」
秋子さんがいつものさわやかスマイルであいさつを返してくれる。
「早いですね?どうかしたんですか」
「ええ、寝汗をかいたもんですから・・・・」
「お風呂なら沸いてますよ」
・・・・なんで?
「じゃ、じゃあひとっ風呂あびてきます」
「はい、ごゆっくり」
う〜む、相変わらず謎な人だ・・・・。
脱衣所でパジャマを脱ぎ曇りガラスの扉を開ける。
「本当に沸いてるし・・・」
この際気にしないどこう。
とりあえずシャワ―で汗を流し風呂につかる。
「ふう・・・」
風呂につかるといろいろと考え事をしてしまうものだ。
だが今、俺の頭の中にはたった一つのテ―マがぐるぐると渦を巻いていた。
“祐一高所恐怖症だよね”
ああ、どうして気づかなかったんだ〜。
こんなんじゃ恥じをかきに行きますって言ってるようなもんじゃないか。
むむ〜残された時間は後わずか。
どうするべきか・・・・。
1、 何も言わず消える。
2、 残りの時間で恐怖を克服する。
3、“あはは〜実は高所恐怖症だったんだ〜”と開きなおる。
ん〜三番は絶対ダメだな、かっこ悪すぎ。
一番もダメだな、後で問い詰められる。
じゃあやっぱり二番か・・・。
秋子さんにでも相談してみるかっ・・・って仕事なんだよな〜。
俺は体と髪を洗い風呂を出た。
とりあえず服を着てくるかな。
トントンと階段を上り部屋に入った。
やっぱり自分の部屋が一番落ち着くなぁ。
ってなごんでる場合じゃないな、早いとこ高所恐怖症を克服せねば!
もぞもぞと服を着こむ。
さて服も着たし、メシでも食うか。
またトントンと階段を下りる。
ちょうど階段を下りると秋子さんが靴を履いていた。
「いってらっしゃい」
「あ、祐一さんいってきます」
そう言ってにこやかに出て行った。
・・・もろ私服だったけど・・・・。
一体どんな仕事なんだろう・・・・・。
まあ、知らぬが仏っていうしな。気にしないどこう。
「あ、祐一おはよう」
「おう」
キッチンに来て見ると、真琴と名雪がメシ朝メシを食っていた。
俺が自分の席に腰かけると名雪がご飯と味噌汁を持ってきてくれた。
「はい」
コトっと俺の前に茶碗を置く。
「サンキュ」
「納豆も食べる?」
「ああ、もらおうかな」
「うん」
うむ、嫁さんはこうあってほしいもんだ。
「祐一新婚さんみたいだね〜」
真琴がにやけた顔ですかさずツッコミをいれてくる。
「な、何言ってんだよ!おまえは」
「あ〜照れてる〜・・・イタッ何するのよう!」
「おまえのその顔がむかついたんだ」
ギャアギャア言っている俺達に名雪が納豆を持ってきた。
「二人で何話てるの?」
「現在のマイクロ経済についてだ」
「へえ〜すごいんだね二人共」
・・・・信じるなよ。
「ま、いいや、いただきます」
もぐもぐ、お、この味噌汁美味いな、さすが秋子さんだ。
おっと、それより早いとこ高所恐怖症を克服しないとな
なんせもう明日だし。
ん?待てよ、そういえば誰か忘れているような・・・・・。
「あぁぁ――――!!」
ご飯を口から吹きだしながらほとんど“ば”に近い音で叫ぶ。
おかげで向かいに座っていた名雪がご飯まみれになっていた。
「何するんだよ祐一」
名雪がタオルで顔を拭きながら文句を言ってくる。
だがそれどころじゃない。
「天野誘うの忘れてた!」
「美汐なら昨日私が誘っといたわよ」
真琴が頬杖をつきながらしれっと言ってきた。
「は?・・・」
「だ・か・ら!美汐にはもう連絡してあるの!」
「な、なんだ、おまえ天野の電話番号知ってたのか」
「うん、前教えてもらったの」
ほっ、良かった。
また、メシに手をつけようとすると・・・・。
目の前で名雪が睨んでいた。
「祐一・・・」
「?どうした」
「どうしたじゃないよ〜」
「俺なんかしたっけ?」
「私にご飯吹きかけたでしょ」
あ、そんなこともあったような・・・。
「わ、悪かった」
「いちごサンデ―」
「へ?・・・」
「1、2.4、8、16」
「お、おい!」
なんで二倍ずつなんだ!
「買ってくれないの?」
「いや今金欠だから・・・」
「ふ〜ん、いいのかなぁ」
なんだ、なにがあるってんだ?
「そういうことならお母さんの無線機にかけちゃおうかな〜♪」
「無線機!?」
生生しすぎるぞ、それは、なんかタイガ―戦車とか乗ってきそうだぞ!
その後ああなってこうなって、ああ〜もう俺は終わりだ〜。
「祐一冗談なのにあんなに悩んでるよ」
「ものすごい想像力の持ち主ね・・・」
何やらこそこそと名雪と真琴が言っている。
「な、何を言っているんだ。今のはわざとに
決まってるだろ」
「祐一、汗すごいよ」
「それこそ滝の様ね」
「きょ、今日は暑いからなぁ」
ハンカチで額を拭きつつ答える。
嘘丸見えである・・・・。
「そ、それより二人に相談があるんだ」
「あからさまに話題を変えたわよ」
「怪しいね・・・」
「だぁぁぁ―――!いいかげんにしろ―!」
頭を抱えながら叫ぶ。
その後二人を五分がかりで説得し、本題に入った。
「・・・という訳で俺の恐怖症を治すのを手伝って欲しいんだ」
「ふ〜ん、まあいいわよ」
「く―」
「寝るな!」
「あっ、ごめん」
慌てて名雪が起きる。
「んで、どうすればいいと思う?」
「聞いた話だと、慣れるしかないみたいよ」
「うん、他に方法も考えつかないし」
・・・慣れるたって、そんないきなり。
「と、いうわけでとり合えずベランダへGO!」
「ま。待てまだ心の準備が・・・。」
「そんなの要らないわよ!」
「ファイトッだよ!」
「うわぁぁぁ!」
泣く泣く二人に引きずられ二階へと上がった。
もとい上がらされた・・・・。
「二匹の天使と悪魔が出会う時それは人知を超えた物へと・・・」
「祐一何ぶつぶつ言ってるの?」
「があぁぁ!人がせっかく恐怖を紛らわそうとしてるのに」
俺は泣きながら壁にしがみつく。
「もう、慣れなきゃいけないのにそれじゃ意味ないでしょ」
「そうそう三十分ぐらい立ってれば、それはもう嘘の様に・・・」
う〜人事だと思いやがって〜。
だが!俺も男だ!
「名雪!俺をそこの端っこの方に縛り付けてくれ!」
「祐一男らしい」
「時限爆弾も付けようか?」
真琴がにやにやしながら言ってくる。
「いらんわ!」
そう一言吐き捨てると大股で隅っこまで歩く。
膝ががくがくと震える。
「さあ!名雪やってくれ!」
なるべく早く・・・・。
いまにも逃げ出しそうだ。
「うん!分かったよ!」
ぎゅっ!ぎゅっ!
「はい、できたよ」
「・・・・名雪」
「ん?」
「この縛り方何処でならった?」
「この間お母さんに」
やっぱり秋子さんは何処かの軍に所属してるんじゃないだろうか。
俺の縛られ方は“私は捕虜です”と言わんばかりだった。
「んで、このロ―プは何処から?」
「祐一が木刀見つけた小屋だよ」
・・・・なんか鉄線が仕込んであるんですけど。
「じゃ祐一がんばってね」
「お、おい!行っちゃうのか!?」
「だってここ暑いもん」
服をパタパタしながら真琴が言う。
「かき氷作ってあげるよ〜」
「わあい♪」
ドタドタドタ・・・・。
「・・・・・」
み〜んみ〜ん。聞こえるのはセミの声・・・・。
ただただ言葉を無くす俺だった。

あとがき!
ども、たいスタ(略称)です。
この名前長すぎ・・・。
後悔後先考えずですな。
さて前回ゆったりと物語を進めると言いましたが・・・。
あんまり変わってないですね。
まあ、自分でも結構ニヤニヤしながら書いてたんで結構おもしろかったと思います。
ではご感想おまちしてます。


では こちらまで お願いします。


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